オレンジの片想い
「おう、邪魔したか?」
「や、もうちょっとで写し終わるから大丈夫...」
「じゃあ待つから、写せ」
そう言われ、戸惑いがちに板書を再開させた。
話しかけようと思っていたから、まさか蒼真の方から来るとは思ってもみなかった。急な出来事に、心臓が活発に動き出す。手が震えそうになって、焦った。
間もなくして写し終わり、シャープペンやら消しゴムやらの筆記具を筆箱に戻し、ノートをパタンと閉じて、蒼真の方を見た。
「...急に、どうしたの?」
何か、あったんだろうか。そう思い尋ねると、次に彼の口から出たひとことにまたびっくりした。
「えっと...あのさ、今日の放課後、時間ある?話したいことあるんだけど」
同じだったのだ。伝えようとしていたことが。
驚いたけど、好都合だ。
「うん、あるよ。実はわたしも、放課後話したいことあるんだ」
声が震えないように注意した。
今、こんなに緊張していたら、本番になったらどれほどの緊張が訪れるのだろうか。見当もつかない。
「わかった。じゃあ、あとでな」
「うん」
蒼真が去って、ふう、とため息を吐いた。
話したいことって、なんだろ。
それも気になるけれど、やっぱりこれからのことを考えたら緊張でおかしくなりそうだった。