オレンジの片想い
それから放課後まで、落ち着く事なんて到底不可能なうえに上の空。何度ひなせちゃんに"どうしよう"と言って宥めてもらったことか。
そしてとうとう放課後がやってきた。
バクバクと心臓が鳴っていて、うるさい。その音に思考回路が止まってしまいそう。
帰り際のひなせちゃんが、こちらへ向けて小さくガッツポーズをしてきた。その姿に少し勇気をもらって、それから小さく深呼吸すると、ちょっとだけ落ち着けた。
教室内には、わたしと蒼真だけとなる。
不意に、中学のときを思い出す。あの時も、大事な話をしたっけな。
俯いていた顔をそっとあげると、視線がぶつかった。
そして、どちらからともなく笑う。
「...蒼真から、話していいよ」
話すには、少し距離があるから、近づきながらそう言った。
先に話してほしかったのは、わたしから言うと蒼真の方が話しにくくなるかもしれないと思ったからだ。それに、わたし自身も冷静に彼の話を聞ける余裕をなくしてしまうかもしれなかったしね。
まあ、大体の話の趣旨は解っているんだけどさ。
わたしが促すと、蒼真は頷いて、話し始めた。
「俺さ、前に雪葉に言われたこと...ずっと考えてた。それで俺、やっと決心したんだ。今日のは、それの決意表明」
なんのこと、とは言わずとも理解した。
やっぱり、小夏ちゃんのこと。
前にわたしが言ったこと、というのも、いちばんに浮かんできた。だから、次に発されるだろう言葉も、予測できていた。
「今日、小夏に告白する」