オレンジの片想い

その意味を、すぐには理解できなかったのであろう。蒼真は呆然と、瞬きをした。

そして数秒経って、彼の目が大きく見開かれた。



「.....え」



ぽろ、とこぼれたみたいに、小さく呟いた蒼真。


そりゃ、驚くよね。

だってわたしの気持ちなんて、自分のものに必死過ぎて見えていなかったでしょう。それを利用して傍にいたのはわたしなんだけれど。



明らかに困ったような、申し訳なさそうな、悲しそうな、それらが入り混じった表情。



そんな顔させたいわけじゃないの。



彼が口を開きかけたその口の形を見て、"ごめん"って、言われるんだろうと思った。それを遮るように、わたしはわざと明るい声で、言った。




「ほら、わたしも勇気出したんだから、蒼真も大丈夫だよ!」




笑顔で、そう。

ちゃんと笑えていなくても、それに気づかれていたとしても、いい。今だけは、笑わせて。



伝えたのは、あなたの背中を押すため。



わたしが、見本になれるから。




「だから、がんばれ」


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