オレンジの片想い
わたしはただひたすら、陽翔の腕に縋って泣いた。
最初は嗚咽を堪えていたけど、我慢しなくていいと背中をさする彼の声に安心して、堪えきれなくなった。気にする余裕もなくなって、遠慮もなく。
だんだん泣き止んで呼吸が整い、いちど陽翔から離れた。
わたしの目じりに残る雫を、陽翔は優しく掬う。
「...ごめん。制服、濡らしちゃって」
「いいよ。ちょっと落ち着いた?」
「ん...ありがと」
泣きすぎて、目のあたりがひりひりする。明日、学校来れるように帰ったらちゃんと冷やしとかなきゃな。
それで、泣かないようにもしなきゃ。
だって笑顔で、蒼真を迎えないといけないから。
「話も聞いてあげたいとこだけど...もうすぐ下校時間なんだよな」
え....
ばっと時計の方を見ると、本当にもう帰らないといけない時刻になっていた。冬は暗くなるのが早いから、最終下校時刻も早くなるけど、それにしても、だ。
わ、わたしどれだけ泣いていたんだ...まさかもう下校時間になっているだなんて。
ちょっと陽翔にも申し訳ないなあ...。
ちら、と気まずく見上げると、それに気づいた彼は何も気にしていないように、ふわりと微笑んだ。
「今ならまだ部活の人と会わないだろうし、出よう」