オレンジの片想い
その背中を慌てて追いかける。
でも、全然追い付けるスピードで歩いてて、そこにまた彼の優しさを感じて
「ほんとにありがとう!」
ちょっと距離の空いたとこで、そう叫んだ。
すると陽翔はいちど立ち止まって顔だけをこちらに向けて、優しく微笑んだ。
その表情さえ、蒼真と重なる。
どうして、わたしは蒼真じゃないと駄目なんだろう。同じ優しさなのに、一体なにがちがうんだろうか。なんで陽翔の優しさには蒼真のように惹かれないんだろう。
他の人を好きになれる日なんて来るのかな。
そんなことを思ってしまうくらい、どうしようもなく蒼真が好きだと再認識する。
...伝えたって、やっぱりすぐには変わんないよね。
むしろ、言葉に出したら、愛しさが増してしまったようにすら思えるのだ。押さえきれなくなった蓋が開いて、開いたまんま、閉じない状態で溢れてるみたい。
だからまた陽翔に罪悪感を感じてしまう。
「雪葉ー、どうした?」
「....あ。なんでもない、ごめん!」
陽翔が呼ぶ声にはっとして、考えることをやめて、その背中に追い付いた。