オレンジの片想い
帰り道、陽翔の背中に向かって、わたしはぽつりぽつりと話した。
そりゃもう、完全に安心しきってたから、心にあること全部吐き出しちゃって、それを本当に彼は受け止めてくれた。傷つく素振りも、見せないで。
...わたしたちは、似た者同士だ。
境遇もそうだけど、いちばんは好きな人の前で強がっちゃうとこ。
ほんと、そっくりだ。
一通り話し終わって、数秒の沈黙。話していても涙が出なかったのは、陽翔のおかげだろうか。
彼はただ聞いているだけで、何も言わなかった。
「...すっきりしたか?」
「うん、すごく」
「それはよかった」
彼は一瞬こちらを見て笑い、それからまた黙って自転車を走らせていた。
...頼れ、なんて言われたけど。
これから先、わたしが蒼真を好きな限り、辛いことはたくさん待ち構えている。目の前でいちゃつかれなんてしたら、どうなるかわからない。でもそれが当たり前に変わっていけるように。
蒼真の事を、諦められるように。
陽翔にずっと頼ってしまっていたら、いつまでも彼を傷つけて、わたしもまた、傷つくだけだ。蒼真のことで悩んだら、もっと忘れられなくなるだけだし。
だから蒼真のことで頼るのは、これが最初で最後にしよう。
そう決めて、心地よい自転車の揺れと目の前の体温に、目を閉じた。