オレンジの片想い

家に着いて自転車から降り、別れの挨拶を交わしてから、みるみる小さくなって遠ざかっていく背中を、見えなくなるまで見送った。



それから家に入り、リビングには顔を出さず、ただいまとだけ大きな声で言って真っ先に自分の部屋へ向かう。

お母さんに心配かけさせちゃうからね。



ベッドに倒れ込んで、大きな大きな溜息をついた。全身の力がふっと抜けて、仰向けに寝転ぶ。しばらく天井を見つめたあと、起き上がってポーチの中に入っている鏡を取り出した。



うわ...これは酷い。



瞼は腫れて真っ赤になって、目の形が変わってしまってると言っても過言ではない。まるで別人だ。

目の白い部分も充血し、鼻も頬も赤い。


とりあえず、顔全体が赤い。



ちゃんと冷やさないと、明日学校行けないな...このままじゃ蒼真にも迷惑かけるよね。自分のせいだってまた、悲しそうな顔させてしまう。


それだけは絶対に避けたい。



保冷剤...取りに行きたいけど、冷蔵庫にあるからお母さんにばれちゃうかなあ。でも仕方ないか。



どうにかばれないように取れるかな、なんて思って忍び足で階段を降りる。


リビングのドアを開けると、晩ご飯の良い匂いがした。やっぱり、台所にいるらしい。困ったなあ...もういいや、ばれても。




そう決心して、無言で台所に踏み入った。
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