オレンジの片想い

部屋に戻るとハンカチに保冷剤を包んで、両目を冷やした。


...どうか治りますように。



しばらくそうして冷やしていると、鞄に入ったままのスマホが鳴った。その音は静まり返った室内に響く。


誰からかは、開かずとも予想できていた。



なんとなく、見るのが怖い。

いや、違う。わたしはまだ、確信を持ちたくないだけ。弱いだけ。変わるって決めたんだから、しっかりしなくちゃ。自分に優しくしちゃだめだ。


すう、と息を吸って鞄に手を伸ばし、震える指先で、画面をタップした。



送信者は、思っていた通り。




_________蒼真。




その名前を見ただけで動悸がすごくて、意識をはっきりさせていないとおかしくなりそうだ。


その、内容は





『上手くいった。本当に感謝してる。ありがとうな』



メッセージを確認して、手からするりとスマホが滑り落ちて、床に転がる。



...よかった。






笑顔の練習、しなくちゃな。



なんて思いながらまた、目じりから涙がおちた。
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