オレンジの片想い
曇りのち晴れ
泣き疲れたからか夜はすぐに寝つけたのに、朝はとても重たかった。
だらだらと起きて最初に、机の上に置きっぱなしにしていた鏡に手を伸ばして、目の腫れを確認する。
...うん、大丈夫。
昨夜必死に冷やしたりなど処置を行った甲斐あって元通り。
それから、チカチカと点滅しているスマホを掴む。
蒼真から、だ。
昨日、既読をつけてしばらくしてから、『おめでとう』とただひとこと送信して、返事を見ずに寝てしまったのだ。
『ありがとう』
ただ、それだけの返信。確認してから、はあ、と溜息をついたら、スマホの画面が真っ暗になった。
...今日、ちゃんと笑顔でいれるかな。
ううん、笑顔でいなきゃいけないんだよね。それでちゃんと口でおめでとうって言わなきゃ、進めないから。
「雪葉ー!遅刻するよー!?」
鏡の前でひとり笑顔をつくっていると、階下からお母さんの呼ぶ大きな声に肩が跳ねた。
それからばっと時計を見ると、いつもより15分も遅い時間。
「わ、今降りるー!」
そう叫んで、階段を駆け下りた。