オレンジの片想い
いつもの倍の速さで支度をこなし、家を飛び出た。
小走りで慣れた道を行く。
これだけ慌ただしい方が、他の余計な事を考えなくて済むからいいな。...なんて、既に余計なこと思っちゃってる。もう、やめよ。
スマホで時間を確認しながら走っていると、少しだけ余裕ができた。
そろそろ歩いても大丈夫かな。
スピードを緩めた途端に息切れして、自分の体力のなさを改めて実感して嫌になった。
文化部だからって...もうちょっと運動しないとなあ。
そんなことを考えていれば、いつも通る駅の前まで来ていた。その駅が目に入った瞬間に、ドキリとする。
小夏ちゃんが、思い浮かぶから。
て、気にしちゃダメなんだってば。大丈夫だいじょうぶ。
なるべく駅の改札口の方は見ないように、気にしないように気をつけながら通り過ぎようとした。だけど。
...こんなときに限って、だ。
神様というものを恨みたくなる。
「雪葉ちゃんっ!」
______ああ、なぜ。
今このタイミングで会ってしまうんだ。
わたしの名前を呼ぶ声を無視することなんて当然できなくて、わたしの足は立ち止まる。
ひどい動悸がする中、わたしも相手の名を呼んだ。
「小夏ちゃん....」