オレンジの片想い

今、いちばん会いたくなかった。


そう思うことが間違いで、ただの醜い嫉妬で、そんな自分がまた嫌になるから、やっぱり会いたくなかった。


何も知らないだろう彼女は、無垢な笑顔で駆け寄ってくる。



それにすら胸が痛む。



「ちょっと遅刻しそうで焦ってたんだけど、雪葉ちゃんいたから安心した~」


「そうなの?わたしも遅刻しかけだったの」


「えっ、じゃあ今...」


「あ、それは大丈夫。間に合ってるよ」


「よかったー、焦った!」



ほっとしたように笑う、小夏ちゃん。

その笑顔はどこか幸せそうにも見えて、だけど毒気を抜かれてしまうような、そんな笑顔。


わたしはふと気づけば、口にしていた。



「...蒼真と、付き合ったんだってね」



言ってから、はっとした。


わ、わたし...自分から地雷踏みに行ってどうするの...!



恐る恐る彼女の反応を窺うと、りんごのようとはこういうことを言うんだろうと思うくらい、真っ赤になっていた。
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