オレンジの片想い
ホームルームが終わって、わたしが席を立つよりも早く、ひなせちゃんがこちらに来てわたしを強制連行していった。
ひなせちゃんに連れて行かれたのは、前に弁当を食べた人気の少ない階段。わたしはそこで大まかに、昨日あった出来事を淡々と語った。彼女は相槌を打ちながら、話している間は口を挟まずに聞いてくれていた。
「...昨日、いろんなことが重なったんだね...」
話し終えてからの第一声。彼女は当然、驚いていた。
「そうなの。わたしもびっくりした。まさか告白した日に告白されるなんて、思ってもみなかったもん」
「木山くんは...全部知ってて、告ったんだろうね」
「そう、だね」
自分の好きな人の想う人が、自分の友だちだって。
好きな人に好きな人がいるっていう、その気持ちは痛いくらいに解る。だから、どうしたらいいのかわからない。でも、頼ってしまうのは駄目だって、それは思う。
頼ってほしいと言われても、そうするわけにはいかない。
そんな利用みたいなこと、大切だからもうしないよ。
「...雪葉ちゃん」
「ん?」
「頑張った、ね」
「...うん。頑張ったよ、わたし」
ひなせちゃんに、ぎゅう、と抱きしめられる。
体温って、どうしてこんなに安心するのかな。すごく勇気をもらえる気がする。
なんて思いながら、そっと目を閉じた。