オレンジの片想い
「あたし黒板にみんなの名前書いてくるよ」
そう言って背中を向けた咲歩に、みんなありがとうと告げた。咲歩は本当にしっかりしてるなあ...。
全ての班が決まり、黒板に名前が埋まると学級委員が役割を決める紙をそれぞれの班に渡した。わたしたちはそれを受け取り役割分担をしていく。
「じゃあ、班長から決めようか。なりたい人いる?」
そういわれて挙手する人は少ないと思う。班長っていう名前がもうめんどくさそうだもんな。わたしが班のみんなに問うと案の定誰も手を挙げなかった。どうやって決めようかなあ、と少し迷っていたとき。
「誰もやらないんだったら俺やってもいいよ」
「え....いいの?」
「おう」
名乗り出たのは、なんと木山くん。あまり面識がなくて、クラスでの彼は見た感じいつも男子同士で悪ふざけをしていた。そんな彼だからまさかやるなんて驚いてしまった。
「じゃあ、木山君で決まりでいい?」
みんなそれぞれに返事をする。それらを聞いてから班長の項目に木山くんの名前を...って。
「ねえ、ごめん。木山くんの下の名前ってあきとだよね?」
「そうだけど」
「漢字。教えてほしいです...」
木山くんの下の名前は、彼の友だちが呼ぶので知っていた。だけどつい最近までクラスの男子の名前さえも覚えていなかったわたしは漢字がわからなかったのだ。
「ああ、えっと...シャーペン貸して」
シャーペンを渡すと、木山と書いたその隣にわたしとは違う字で『陽翔』と書かれた。