オレンジの片想い
「そっか。おつかれさま...って、変かな?」
「変じゃないよー。ありがとね」
わたしがへらへらしていたら、なんだか月菜の方が、自分の事のように悲しそうな目をしてた。
まるで月菜が、失恋したみたいに。
「...月菜、そんな顔しないで。わたし失恋しちゃったけど、すっごい悲しかったし辛かったし苦しかったけど、ちゃんと幸せだったから」
わたし、もう本当に平気なんだよ。
それを伝えたくて、わざと明るく振る舞って見せると、月菜は不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。
そんな彼女に、笑顔を向けた。
「好きになってよかったって、恋してよかったって思えるから。そう思えるような恋をできたことが、すごい幸せな事なんじゃないかなって」
恋が叶ったら、そりゃあ嬉しいし計り知れないくらい幸せで満たされるんだと思う。
でも、叶っても幸せじゃないって思うような恋もあって、叶わなくて悲しい終わりをする恋もあって、叶わなくても幸せだったって思える恋だってきっとある。
叶わないことが全て悪いことじゃない。
わたしのこの幕を閉じた初恋は、ゆっくりゆっくり思い出として昇華されていくけれど、その記憶が、蒼真がくれた大切な贈り物。
わたしの、たからものになったんだよ。