オレンジの片想い
わたしもつられて、微笑んだ。そうするほか、どうしろって言うのか。
...顔合わせるの、久しぶりだ。
例の事があってから、視線は交わらず常に一方通行だった。決して目が合うことはなくて、それが悲しくて、意識してみるのを止めたらそれが"普通"になっていったのだ。
「...久しぶり」
「だね。久しぶり」
なんとなく目を逸らしたら、蒼真が言葉を発したから、また顔を上げて作り笑いを浮かべた。
「...今から部活?」
「おう。そっちも?」
「うん。水泳部って冬はさすがに泳げないよね。何してるの?」
「筋トレ。だから今は大抵ピロティでやってる」
「そうなんだ。じゃあ途中まで一緒だ」
「ああ、部室1階だもんな。行くか」
その言葉を合図に、わたしたちは歩き出し、教室を出た。
なんか変な感じだな。いつもひとりで歩く部室までの廊下を、蒼真と歩いてるなんてさ。久しぶりだし、なんか緊張してしまう。
...背、伸びたな。
隣に並んだ蒼真を見上げて、そう思った。