オレンジの片想い


_______プルルルル....




少し遠くに置いてあったスマホが鳴った。わたしは急いでその音のするところへ向い、画面を確認してから通話ボタンをタップした。




「もしもし、お母さん?」


「あ、雪葉。忙しいところにごめんね。久しぶり、元気だった?」



少し久しぶりに聞く母の声が懐かしかった。

わたしは元気な母の声に安心して、電話だから誰にも表情は伝わらないけど、ふっと笑った。後ろにあった棚に凭れて、口を開いた。




「大丈夫だよ。お母さんこそ元気そうで良かった」


「まだまだ元気よー」


「あはは、そうだね。それで、いきなり電話なんてどうしたの?」




親元を離れてもう数年経つのに、電話なんてかけてくることは、何かあったとき以外なかった。だから今回も、何か用件があってかけてきたはず。


わたしが訊けば母は、ああ、と言って思い出したように話し出した。




「あんたにね、同窓会の招待状きてるんだけど」

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