オレンジの片想い
...なにそれ。
蒼真の頬が赤いのは、気のせいなんかじゃない。あのときみたいに陽は当たっていないから。わたしの顔はきっと、蒼真以上に赤くなっていると思うけど。
「...帰ろっか」
「...おう」
心臓が速く動きすぎて痛いくらいだ。今でこんなので、この先告白とかできるんだろうか...。
友だちの恋愛相談をよく聞いてきた。恋なんて、わたしは無縁だったけど彼女たちを見ててなんとなくわかっているつもりだった。
だけどその当事者となった今、想像していたものと違っていて戸惑いばかりだ。
今までよくアドバイスなんてしてこれたなと思う。これから誰かの相談にのったとき、もう"絶対"なんて言葉言えないよ。
帰り道、わたしたちはわたしたちじゃないみたいにお互い無言だった。
いつもなら沈黙は気まずくなるし嫌だから話題をつくって会話するのに。でも、今はその沈黙が嫌じゃなくて、むしろ心地よかった。
だけどその心地よさも本当に短い時間で。すぐに分かれ道まで来てしまう。
「じゃあ...また、明日な」
「うん。あとちょっと、頑張ろう」
「おう。じゃあな」
遠ざかる背中を惜しんで、少しの間見つめてた。
「...!」
すると急に、蒼真がこちらを振り返った。驚いたのは蒼真も同じみたいだった。どうしたらいいものかと、とりあえず小さく手を振ってみたら、蒼真は笑顔で手を振り返し前を向いた。
ねえ、わたし期待してもいいんですか?