オレンジの片想い
自惚れてるみたいで、そうだって思っていいのかわからなかったけど、やっぱり振り返ったんだよね。
だって明らかに驚いた顔してたし。
「もう、期待しちゃって、わたし。絶対なんてそんなのわかんないから、違って傷つくかもしれないのに」
相手の気持ちなんて、周りの人から見ただけではわからないもの。
傷つくのは、怖い。
「たしかにね...絶対大丈夫なんてあたしも言えないや。だけど期待しちゃうのは当たり前だよね。あたしでもするよ、それは」
「ぐわああ!好きな人いるのって、聞きたいけど怖い!」
いるって言われたらモヤモヤするし、でもそれはわたしも範囲内なわけだし。いないって言われたらわたしのこと好きじゃないのは決定で頑張るしかないし...。
「こんなに難しいとは....」
恋をするみんなの気持ちが、やっと心から理解できた気がする。これは、あれだけ一喜一憂するのもわかるなあ。
「瀬川くんはフレンドリーだから厄介だねえ」
「それなんだよ!嫉妬しちゃうし、もう自分嫌になる!」
優しいから好きになったのに。その対象が誰にでもっていうのがさ、妬いちゃうんだよ。どんだけ心狭いの、わたし。
って、わたしはたぶん考えすぎなんだよ。わたしはわたしがそのとき思うことをやればいいんだ。
「も、考えるのやめる!わたし咲歩といれたらそれでいいよもう!」
「やめてよ、変な目で見られるから」
「それはわたしも嫌だわ」
その日は、蒼真の事で悩むのをやめて咲歩と喋りまくった。
帰路について、ちょっとだけ靄がとれた気がした。