オレンジの片想い


.........えっ?





彼が発した一言に思わず固まってしまった。





「ん?なんか俺駄目なこと言ったか?」






わたしの反応を見て少し焦ったようにそう言った。彼はなにも駄目なことなんて言ってない。言ってないんだけど言ってる感じがしてしまう。それはわたしが慣れてないだけで。





「や....駄目...じゃないよ」





そう返すと、彼はホッとしたような顔をした。





「じゃあ"雪葉"で。ちゃんと蒼真って呼べよ?」





先程と変わらぬ笑顔の彼に、コクリと頷いた。そして、さっきから思っていたことを口にした。





「...名前、覚えててくれたんだね....」





「篠井雪葉だろ?同じクラスなら覚えるだろ」




全員覚えてるんだ。わたしなんて男子は、名字はわかっても下の名前までは覚えてない。





「話したことなかったらわたしを見て名前言えない人結構多いんだよ。だからびっくりした」





しかも、いきなり下の名前もだし。もっとびっくりだ。






「へぇ。でもさ、そんなん言ったら雪葉も俺の名前知ってんじゃん?」





「まあそうなんだけど....でも目立ってたから前から知ってたよ」


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