オレンジの片想い

たしかに、月菜に知ってもらったら少しは安心できるかもしれない。こういうのを牽制って言うんだな。



「そうだね。今日ホテルで3人だし、言おうかな」


「ん、そうしな!」


「ありがとう咲歩...」


「お礼ならチーズケーキでね」


「有料だったの!?」


「嘘だよ」



咲歩の冗談は本当に冗談に聞こえない...。


でも咲歩のおかげでちょっと楽になった。



わたしは寝ずにずっと咲歩と喋っていて、銀閣寺に到着。ただ見学するだけだから班行動ではなく、蒼真と顔を合わせることはなかった。


見学し終わって、また同じバスでホテルまで移動した。本当に銀閣寺のすぐ近くだったから10分もかからなかった。


ホテルに着き、昨日と同じように自分の部屋に荷物を置く。ただ、お風呂は昨日と違って大浴場ではなく各部屋に付いているお風呂を使用した。



みんなが入り終わって、7時頃夕飯を食べた。食べ終えた後は消灯時間まで自由だから、わたしたちはエントランスでお土産を買ったりした。


そして10時、消灯。


寝転ぶと眠たくなってしまうから、体を起こして小声で喋る。



「明日で修学旅行終わりなんて早いな~」


「帰りたくないね」


「うん...」


今、切り出していいかな。咲歩と目を合わせる。


「....あのね」


話し出したのは、わたしじゃない。月菜だった。



その表情は明るいものではなく、なんとも言えない顔をしていた。

< 51 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop