オレンジの片想い

朝ごはんはホテルなのでバイキング。食べ終えて支度したら、バスへ。



最終日だから午前中だけしか観光することができない。今日はバスで八坂神社まで行き、そこから清水寺まで班行動。先生がまた1日目と同じ注意を言い、わたしたちはそれぞれの班で歩きだした。



「よし、じゃあ行くか!今日は雪葉が地図だよな?」



「うん。えーと、とりあえずまっすぐ」



月菜に蒼真が好きだって言ってだいぶ靄が取て、ちゃんと彼の前で笑顔でいられる。



地図係のため、先頭を歩く。



「今日で修学旅行終わりかー。早いな」


「ほんと、短いよー!ってこれたぶんみんな思ってるよね」


「はは、たしかにな」


...みんなは先頭のわたしより後ろを歩くのに、蒼真はわたしの左側にいる。それが嬉しくて、顔がにやけるのを隠すためにひたすら地図を見ているフリをしていた。



「...なあ、雪葉ー」


「んー?」


「好きなやついる?」



.........え



全く予想していなかったその質問に、驚きすぎて声も出なくて、地図に向けてた視線を思い切り隣に向けた。


彼の表情は、普通。ふと気になって訊いた...って感じだ。



こういうときって、いるって素直に言ったほうがいいのかな。



でも、いるって言ったら、蒼真は自分じゃない誰かだと思って誤解するかな?それとも自分かもしれないって勘づくかな?



「....蒼真は?」



わからなくて、視線を地図に戻して訊き返した。




「雪葉だよ」




「....え?」




「........って、言ったらどうする?」
< 55 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop