オレンジの片想い
「ねえ、ゆき。やっぱ何かあったでしょ」
「雪葉、さっきから笑ってばっかで、うんしか言わないし...」
新幹線の中、月菜と咲歩に問い詰められた。やっぱりばれるよね、ふたりには。
自分でも、明らかに周りに対する態度がおかしいのはわかっていた。1つのことを考えるのに頭が精いっぱいで、素っ気ない返事に笑顔を付けることしかできなかったから。
「うん...ちょっと」
「あたしらにも言えないの?」
寂しさ、悲しさ、心配、そして少しの怒気。いろんな感情の混ざった咲歩の声色と表情。
違う。言えないんじゃない。言い表せられないんだ。
「ふたりのことは、信用してるよ。でもわたしも整理できてなくて...まだ、言えない。ごめん」
本当は、もう冷静に呑み込めていた。ただこれは、誰にも相談せずに自分で解決しないといけない気がした。
「でも、いつかちゃんと話すから。それまで待っててほしい」
もう1度、ちゃんと蒼真と話して、あのときの表情の意味を。わたしに対する気持ちを、訊きたい。
その行動の結果がどんなものでも、いちばんにふたりに聞いてほしい。
「...わかった。待つよ」
「私も。でも、本当につらくなってもう駄目だって思ったら、迷わず頼ってね?」
「ありがとう」
咲歩と月菜がいてくれるだけで心強い。修学旅行が終わって次に蒼真と会えるのは、今日が金曜日だから月曜日。
それまでにいっぱい悩もう。
今は、楽しまなきゃ。そう思って、3人でずっと話し込んだ。