オレンジの片想い
挨拶が終わり、咲歩がこちらへ来た。
「ゆき、席そこ?いいなー」
「咲歩どこ?」
「あたし、いちばん前だよ。教卓のほんとすぐ前の」
「あれ、高木の隣?」
「うん。そう」
高木の隣だったのか。高木、自分がいちばん前だってこと以外何も言わなかったから、知らなかった。
「そうなんだ....じゃあ月菜は?」
「月菜はあそこ」
指を指した先に、月菜がいた。ちょうど立ち上がったところだった。彼女の席は、蒼真の列の前から2番目。隣の人は、梨子ちゃんっていう女の子だった。
月菜が、わたしたちに気づいて笑顔で手を振る。それに振り返すと、わたしたちの方へ歩み寄ってきて、3人でしゃべっていた。
そんなときでさえも、蒼真の声を、存在を気にかけてしまう。
彼の声が、徐々に近づく。もうすぐそこに蒼真がいる。胸が高鳴って、まともにみんなの話に入れなくなってしまい、頭の中を支配された。
わたし、蒼真に訊きたいことがたくさんあるんだった。
「_________蒼真!」
通りすぎようとしたところを、わたしは呼び止めた。