オレンジの片想い
わたしの問いに答えをくれない蒼真。一体なにをそんなに隠しているんだろうか。
泣きそうになりながら彼の言葉を待った。
「.....雪葉には言えない。ごめんな」
なんで。そう訊いたってわたしには言えないんだから、彼は絶対に教えてはくれないんだろうと思った。そこまで言われたら、もう何も言えなかった。
悲しくて...それなのに涙は出なかった。
ただわたしの心は、悲哀と喪失感でいっぱいだった。
わたしはふらふらと踵を返して教室に戻った。
ドアを開けると、咲歩と月菜が心配そうに近寄ってきた。
「....雪葉、大丈夫?」
「瀬川と何があったのかあたし全然わかんないんだけどさ...」
やっぱりそう思わせてしまったよね。
「ごめんね。大丈夫だよ」
なんでこんな悲しいのに笑顔は作れるんだろう。でも、まだふたりに話す気にはなれなかった。だから誤魔化したけど、ふたりは不満げな表情だった。そりゃそうなんだけどね。
わたしには、言えない....か。
避けてることは認めるんだな。理由はやっぱり気になるけど、誰にだって仲の良い友だちにでも言いたくないことってあるしな。なんて、冷静になれている自分にびっくりだ。
でも...わたしじゃなかったら知られてもいいってこと?全然わかんない。もやもやする。
それに、また哀しげな顔してた。その意味すら訊いても教えてくれないのかなあ。今、これ以上素っ気なくされたらわたし、たぶんもたない。
あああ...何も考えたくないよ。もういっそ無になりたいわ。
自分の席に突っ伏してそう思った。
このときわたしは、もう理由を聞くことはできないだろうと諦めていた。だからこそ____
_____数日後、蒼真がわたしを避けていた理由が明らかになるなんて、思ってもみなかったのだ。