オレンジの片想い
その瞬間、身体中が重力に引っ張られたみたいに重い衝撃が全身に走った。頭の中、言葉の意味を理解しているのに受け入れられない。
ねえ誰か、嘘だって言って。
先生の発言にクラスがざわめいた。高木も陽翔も驚いた顔をしているから、たぶん誰にも打ち明けていなかったんだろう。
「瀬川、みんなに何か....」
先生が促すと、蒼真は....度々見せた、あの表情を浮かべた。そんな彼を見て、それの理由がなんとなくわかった気がした。
「...急でごめん。俺、こーいう別れの挨拶みたいなのって苦手でさ。あんまり長くはしたくないんだけど...」
下向き加減だった顔を上げて、蒼真は笑顔を作った。だけど、全然笑えてなくて。こっちが泣きそうだよ。
「今までありがとうな。また、会おう」
ああ、本当にいなくなっちゃうんだな。
さよならって言わないところが蒼真らしいなって思った。
全員でクラス写真を撮ってHRが終わると、当然みんな蒼真の周りに集まった。それぞれが別れを惜しみ、教室からひとりふたりと人が減っていく。
最後のひとりが出ていって....ふたりきり。
確かめたいことがある。最後の最後まで、冷たくされたって構わない。ただ、話がしたかった。
ゆっくりと蒼真を見ると、久しぶりに視線が交わった。
「....なんか、久しぶりだね」