オレンジの片想い
「だな」
その笑顔も。わたしに向けられたものが嬉しかった。今まで蒼真と話すことが当たり前のことだったからなおさら。
もうずっと会うことないかもしれないって思ったらすごく寂しい。
「びっくりした。いきなり転校って...」
「だろうな。誰にも言ってなかったからな」
やっぱり言ってなかったんだな。蒼真の表情を見れば何で言わなかったのかなんて大体想像がつく。
きっと、気を遣わせてしまうよりも何も知らないままで自然に接してもらいたかったんだろうな。何気なかったここで日常を、思い出にしようとしたんだと思う。
「雪葉、部活は?」
「ちょうどいいことに今日は休みなの」
写真部の活動日は週5日。土日はいつも休みで、平日は大体は活動している。だけど今日は顧問の不在やら何やら先生の都合で休みなのだ。
だから気兼ねなく、蒼真と話すことができる。
「蒼真は?水泳部だったよね。挨拶とか、行かなくていいの?」
「部活には朝練の時言ってあるんだ」
「そうなの?そういえばクラスの水泳部って蒼真だけだね」
「うん。だから誰も知らなかったんだよ」
それでも言ったのは今日なんだから急だよね。わたしだったら絶対言っちゃうなあ。
蒼真もわたしも用事がないから、確かめるための時間は十分ある。だけど、それだけじゃなくてもっと話したいって欲が出る。このまま時間が止まってしまえばいいのにと思った。
「...いつから、転校すること決まってたの?」