オレンジの片想い

...あれ。



喉の奥の方に、何かがつっかえたみたいな感覚。



「...うん。それは、気づいてたよ」


「あー、やっぱな。まあ気づかない人のが少ないよな」



懐かしむような、蒼真の目。わたしのなかは灰色の何かが広がる。それに気づかれまいと口角を無理矢理引き上げて微笑を作ってみせた。




"好きだった"




その言葉の過去形が、小さな棘となって突き刺さる。




「雪葉は?」


「ん?」


「俺の事どう思ってた?」



蒼真は訊いてから、"なんか恥ずかしいな"とはにかんで付け加えた。




「.....好きだった、よ」




そう、わたしも"好きだった"。



「うん、知ってた」


「ふ、お互いバレバレだったんだね」


「だな」



....もしもの話。


あの頃に想いを伝えて、お互い同じ気持ちだって明確に分かり合えていたら。この再会ももっと別のかたちだったんだろうか。



なんて思っても、意味なんてない。



蒼真の表情が、瞳が、態度が、もう過去とは違うんだってことを物語っていた。
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