オレンジの片想い
数秒訪れた沈黙。慌てて話題を探した。
「ていうか、蒼真って妹いたんだね」
「ん?ああ。言ってなかったか?」
「うん。名前なんて言うの?」
「ゆかだよ。結ぶに花って書いて」
結花ちゃんか、かわいい名前。蒼真が中3のときに小4てことは、今は小5か。会ってみたいなあ。
「雪葉は兄弟いるのか?」
「ううん、一人っ子だよー。だから兄弟いるの憧れる!」
まあ兄が欲しかったわけだけど。長女としてわたしが産まれたからそれはもう叶わないんだよね。少し大きくなった今は"欲しい"とは言わないけど、やっぱり兄弟っていうのは憧れる。
「そうかー?いる側としては、いるのが当たり前だからよくわかんねえ」
「そんな台詞も言ってみたいよーわたしは!嫌いとか、鬱陶しいとか皆言うけど、わたしには仲良いようにしか見えないしね」
「え、そんな風に見えるんだ?」
「うん。喧嘩するほど仲が良いって言葉は本当だと思うよ。本当に仲が悪かったら喧嘩もしないくらいお互いに関心ないでしょ?」
「まあ....確かに。そーいう考え方すれば、嫌いでも自分の内側にそいつがいるって事だもんな」
「一人っ子だからこそ周り見てそう思うの」
....ってわたしは誰なんだ。何かの専門家の如くすごい語っちゃったよ。
急に恥ずかしくなってきて、蒼真を見上げると、彼がそれに気づき見下げ、目が合う。わたしは情けない笑いを浮かべた。
ふと、そこで思う。
「...蒼真、背伸びたね」