オレンジの片想い
小夏ちゃんも、月菜と同じ状況なのか。誰ひとり知らない子ばっかりの中で、頑張らないといけない。
わたしは、ふたりの会話には入らずにただ隣で聞いていた。
「小夏なら、大丈夫だって」
「そんな根拠のない....わっ」
反論しようとした小夏ちゃんを咎めるように、
蒼真が手を伸ばし彼女の頭にコツンと拳で叩いた。
「ぶつかるしかねえんだから、無理でも大丈夫なんだよ」
「....ふ、なにそれ。めちゃくちゃじゃん」
「まあ、頑張れ」
「うん。ありがとね、蒼真!」
彼らのやり取りを聞きながら、ふと蒼真の表情を窺ったとき、わたしは一瞬で地獄に突き落とされたような感覚に陥った。
.....あ。これ、だめなやつだよ、わたしが。
わたしはすぐに顔を逸らした。まあ、ふたりは話に夢中だからわたしがどんな顔してようと気にも止めないんだろうけどさ。
...小夏ちゃんを見る蒼真の表情を思い出す。それはまるで彼女の事が"特別"なんだって言っているようだった。
そう思えてしまう程に、彼の瞳は、優しさと熱っぽさを帯びていたのだ。
これが、女の勘ってやつ?
蒼真は___________小夏ちゃんが、好きなんだ。
そうか。蒼真ってほんと分かりやすいよなあ。
本人はたぶん、だだ漏れなんて思ってないんだろうけど。
わたしはずっと、下を向いて歩いていた。
心臓の辺りが火傷を負ったようにチリチリと痛んだ。