オレンジの片想い
君の好きな人
「あ、あたし教室ここだから」
そう声が聞こえ、わたしははっとして顔を上げるともう5組の教室の前だった。
「数字だけ聞いたらそんな離れてないけど、クラスは結構遠いな」
確かに、間に階段とトイレも挟むし意外と遠かったり。そして蒼真の声が、どことなく残念そうに聞こえてしまうのだ。
「ほんとだ、遠い!」
「頑張ってぼっちは免れろよ?」
「う....蒼真もね」
「俺は知り合いいるんで」
「っ、絶対蒼真より多く友だち作ってやるんだからー!」
「ははっ、じゃあな。頑張れよ」
「うん、じゃあね!雪葉ちゃんも」
おあ、いきなりきた。少し首を傾けそう言い、さらさらの髪の毛が揺れた。やっぱ可愛いなあ。
「じゃあね」
口角を頑張って引き上げた。どうしようわたし、さっきからちゃんと笑えてないぞ。自分でもひきつっているのがよく分かった。
だけど、思ったより上手く笑顔を作れていたようで、彼女はまたにこりと笑って、緊張した面持ちで教室へ入っていった。
ふたりきりに戻ったわたしたちは、再び歩みを進めた。