オレンジの片想い

「わ、たし...喋るの、苦手で...」



喋ることが苦手。そう言った彼女が、何かを伝えようとしてる。それを催促はせずに、わたしは無言で頷き言葉を待った。



「だから...は、話しかけてくれて、...ありがとう」




...そんなことで、ありがとうなんて。言われるとは思ってもみなかった。



照れくさくって、嬉しくなってついつい頬が緩む。ああわたし、頑張ってひなせちゃんに声掛けてよかったなあ。



「こちらこそ話してくれてありがとうね。ひなせちゃんいなかったらわたし、今頃独り寂しく座ってるとこだった」



「冗談じゃなくてやばかったもんな」


「女子の友情深め合ってる時に入ってくんな!」



ずっと盗み聞きされてたし。常にむかつくこと言われてたけど。友だちできたしいっか。



ひなせちゃんと少し話していると、やっと担任が教室に入ってきた。えらく遅かったな。別にいいんだけど。



まずは担任の挨拶から入った。担任は金橋といい、優しそうな男性。それから出席番号順に軽く自己紹介を済ませ、学級委員やら委員会やらを決め、それが終われば今日はもう帰るだけ。



「ひなせちゃん、また明日ー」


「雪葉、ちゃん。ばいばい」


「陽翔もまたね。あ、蒼真も。ばいばい」


「あ、ってなんだよ」


「おー、雪葉また明日な」



蒼真をさらっと無視して3人に向けて手を振り、わたしはそそくさと教室を出て3組へと足を運んだ。

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