オレンジの片想い

ひょっこりと3組の後ろのドアから顔を出し、数時間前まで不安を浮かべていた彼女の姿を探す。これから咲歩に会う予定なのだ。


だけどいくら見渡しても見つからない。もしかして、入れ違ってもう先に行っちゃってるとか?わたしも靴箱行ってみようかな、居なかったら待っとけばいいし。



階段の方へ数歩進んだところで、背後から誰かが勢いよく抱きついてきて、よろめいた。



「わ...!」



なんとか持ちこたえる。"誰か"なんてひとりしかいないんだけどね。



「雪葉ああ~~~やっと...放課後だ...」


「る、月菜....くるしい....」


「あ、ごめん」



ぱっと首を絞めるように巻きつけられてた腕を離されて、解放される。息を整えて、隣に並ぶ。



「月菜、大丈夫だった?」


顔を覗き込むと、月菜はにっこりと笑った。



「うん!ちゃんとできたよ~」



さっきのダイナミックハグはきっと、安堵からなんだろう。もう不安は拭われていたようで、その表情にほっとした。



「よかったじゃん!」


「ほんとね。なんとかやっていけそう...雪葉は?」


「ふふふ...わたしも可愛い友だちができたよ」


「おおー!お互いぼっちにならずに済んだね」


「だね、よかったー。あっ、そうだ。あのね....」



蒼真の事を言いかけて、止める。



「...やっぱ後で言う」


「えー!?気になるじゃん!」


「咲歩も揃ってから言うよ」



そう言うと、月菜は不服そうに頷いた。
< 98 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop