オレンジの片想い
ひょっこりと3組の後ろのドアから顔を出し、数時間前まで不安を浮かべていた彼女の姿を探す。これから咲歩に会う予定なのだ。
だけどいくら見渡しても見つからない。もしかして、入れ違ってもう先に行っちゃってるとか?わたしも靴箱行ってみようかな、居なかったら待っとけばいいし。
階段の方へ数歩進んだところで、背後から誰かが勢いよく抱きついてきて、よろめいた。
「わ...!」
なんとか持ちこたえる。"誰か"なんてひとりしかいないんだけどね。
「雪葉ああ~~~やっと...放課後だ...」
「る、月菜....くるしい....」
「あ、ごめん」
ぱっと首を絞めるように巻きつけられてた腕を離されて、解放される。息を整えて、隣に並ぶ。
「月菜、大丈夫だった?」
顔を覗き込むと、月菜はにっこりと笑った。
「うん!ちゃんとできたよ~」
さっきのダイナミックハグはきっと、安堵からなんだろう。もう不安は拭われていたようで、その表情にほっとした。
「よかったじゃん!」
「ほんとね。なんとかやっていけそう...雪葉は?」
「ふふふ...わたしも可愛い友だちができたよ」
「おおー!お互いぼっちにならずに済んだね」
「だね、よかったー。あっ、そうだ。あのね....」
蒼真の事を言いかけて、止める。
「...やっぱ後で言う」
「えー!?気になるじゃん!」
「咲歩も揃ってから言うよ」
そう言うと、月菜は不服そうに頷いた。