神様のおもちゃ箱
「もう二十七にもなるんだから、そろそろ結婚考えなさいって。早く孫の顔見せてくれって」

「け、っこん……」


俺はピンときた。

さっきの写真はお見合い写真だ。


きっと母親が実家から送ってきたんだろう。


“あ、なんでもない”


そういえば、ちょっと慌ててたな。

俺は何とも言えない気持ちになった。


だけど、関係ないよな?

だって由紀子さんには俺が……。



「……その相手と、会うの?」


「う、ん。まだ分かんない…。地元の市役所で働いてる人でね。何かお母さんが気に入っちゃったみたいで。会うだけ、会ってみようかなって思ってる」



は?

何言ってんだよ?


だって。


だって、由紀子さんには俺がいるのに。


彼女の口から出てくる台詞が、どうしても理解できなかった。

間違いだって思いたかった。



「早くお母さん、安心させてあげなきゃって分かってるんだけどね…」


俺は?なぁ、俺は?

目の前が真っ暗になった。


由紀子さんは、どうしてそんなこと言うんだろう。

しかもそれが当たり前のことように、俺に話すんだろう。



目の前にいるのに。

会いたくて会いたくて、こんな遅くに部屋まで来たのに。



俺って何なんだろう?

由紀子さんの何なんだろう?

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