神様のおもちゃ箱

―――少しの間、うとうとしていたらしい。


体を起こすと、隣に由紀子さんはいなかった。

自分の隣には、誰もいなかった。


目を擦って服を手に取ると、またあの雑音が聞こえてきた。

また由紀子さんが洗濯機を揺らしている。



「そろそろ、変えどきかな」

「とりあえず、業者呼べよ。まだ保障期間かも……」



――そうじゃなくて。

由紀子さんはそう遮った。



「私たち」


しんと静まり返る夕方の部屋。

黄色く染まる、部屋。


由紀子さんが洗濯機を愛しそうに撫でる。


「物にも人にも、愛着ってものが湧くから、面倒くさいよね」


少しだけ振り返って、ふっと笑って、

彼女はまた背を向け、小さく俯いた。


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