神様のおもちゃ箱
「俺、実は…井伏さんは“あっち系”の仕事してる人だと思ってました」
「無理ないよ。私も最初思った。確かに、アロハシャツにチノパンに金色ネックレスじゃね」
「そうなんすよ。俺、話しかけられる度めちゃめちゃ怖くて、とにかく関わりたくない!って思ってて…。
でもまさか、こんな格好いい仕事やってたなんて。マジでびっくりです」
「業界内では、知る人ぞ知る“井伏孝則”らしいけど…写真とかカメラに興味なかったら、普通の人は知らないんじゃないかなぁ。でも新刊コーナーにああして置いてもらってるくらいだし、才能はあるんじゃないの」
「へぇー」
関心して頷いていると、先ほどのウエイトレスがやたら元気に「お待たせいたしました!」と料理を持ってきた。
由紀子さんのが先に来て、続けて俺のを他のウエイトレスが持ってきた。
伝票をプラスチックのケースに手馴れた手つきで入れ、また頭を下げて戻っていった。
「あーお腹減ったぁ!さ、食べよう」
「俺、奢ってもらっちゃって本当にいいんすかね?この前だって奢ってもらったのに」
すると由紀子さんが「いいって言ってるでしょ。文句ある?!」と冗談で口を膨らませた。
「いや…じゃあいただき、ます」
「はい!どうぞ」
由紀子さんは満足気に笑って、自分もフォークとスプーンを手に取った。
ハンバーグの肉汁がじゅわっと口の中に広がる。
うん、なかなか上手い。
カルピスを一口飲んでから、俺はずっと気になっていた事を質問した。