神様のおもちゃ箱

色気づいたワンピース


「俺より年上で丑年って事は……」


大学の掲示板の横を通りながら、俺は指を折ったり広げたりして計算していた。

もう6月に入ったにも関わらず、まだ梅雨入りしていないであろう空は、とりあえず晴れていた。

そんなにじめじめしているわけでもなく、俺をまったりと眠くさせるには十分な天気だった。


さっきから何を考えていたかと言うと……

由紀子さんは一体、何歳なんだろうという事。


由紀子さんは童顔だし、年齢不詳なところがある。


よく女性に歳を聞くのは失礼だ、と聞くもんだから、

俺はこの前さりげなく「由紀子さんは何年ですか?俺は巳年です」と持ちかけたら

(今思えば、結局歳を聞いている事には変わりない)、


「丑」と笑って頭に指で角を作っておちゃらけていた。

いい大人が何を…。


俺は頭をひねる。


「子、丑、寅……」


――あれ、次、何だっけ?

すると突然、誰かに思いきり背中を叩かれた。
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