神様のおもちゃ箱
「ねぇ、俺たちって付き合ってんの?」
「んー?何か言ったー?」
服を着てキッチンでコーヒーを入れている由紀子さんの華奢な背中に、話しかけた。
ジュジュッと香ばしい音がする。
――本当は聞こえてるくせに……。
俺はもう一度ベッドに寝そべって、疑いの目を向け「だからー」とだるそうに質問を繰り返した。
「そんなの別にどうだっていいじゃん。ハイ、どうぞ」
「………はぁ」
コーヒーカップで口元は隠れていたけど、彼女の目は笑っていた。
いつもそう。
そうやってはぐらかす。
もう俺の中で彼女の口癖といえば、“愛があれば付き合ってるとか、付き合ってないとかはどうでもいい”だった。
それって何なんだ?
どうなんだ?
こうして親密な仲になって俺は由紀子さんにため口をきくようになった。
ただ、由紀子“さん”という呼び方はそのままだ。