神様のおもちゃ箱

―…

くやしいけど、俺の頭の中は由紀子さんでいっぱいだった。

少しでもいいから顔が見たくて、俺はわざとらしく売店へと顔を出した。


特に買うものはないんだけど、まぁ、無難に飲み物でも。


ところが店に足を踏み入れた途端、俺は思わず眉間にしわを寄せた。

由紀子さんと男が仲良く話している。


――誰だよ…!



好感度を狙ったような、お洒落なシャツとネクタイの組み合わせ。

髪もさりげなくいじっていて、ワイルドな雰囲気。


確か、ドイツ語入門の佐野とかいう講師だ。

歳は確か若くて、30歳前後…だったかな。


由紀子さんは店に入ってきた俺に気づきもしない。


くそっ、気づけよ、ぼけ!


とりあえず様子を伺いながら、飲み物コーナーへ。

俺の中でどんどんモヤモヤが溜まっていく。


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