神様のおもちゃ箱

二人が真ん丸い目をして、乱暴に置かれたミルクティーを見た。

もちろん客はオレ。


「あら、健吾くん」


あら、じゃねーよ!と言いたかったけど、俺は黙って財布から小銭を出した。

すると佐野は名残惜しそうに、「じゃあね、阿笠さん。また」と由紀子さんに笑いかけ、颯爽と去っていった。


さりげなく振った手。

裾から、高そうな時計が見えた。



「袋ご利用になりますかー」

由紀子さんは、店員ぶって笑った。


「――いりません」

「うん。えらいね。これからはエコ、エコ」


からっと明るい、いつも通りの声で喋る彼女。


おかしい。

何でそんな普通なんだよ。


モヤモヤしているのは、俺だけなのか?

だとしたら、それはどうなんだ?


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