白い闇に囚われてー刹那の風花ー【完】
すぐにでも追い出したい衝動が過ぎて、喉が動かない。
「今度海外転勤になったから、もうここへ来ることもないわ。置いてあるものはすきにして構わないわ。
出て行ってもいいし、家の所有権はそっちの人が持っているから、欲しかったら買いなさい。じゃあ、私はまだ仕事が残っているから失礼するわ」
そう言って、椅子を後ろに引いて立ち上がる。
まさか本当に、それを言うためだけに帰って来た――いや、来たのか。
「私もしばらく日本を離れる」
そう言って、ソファから立ち上がる。