白い闇に囚われてー刹那の風花ー【完】
「古くから知ってることは案外忘れないんだが、新しい患者さんを忘れてしまってな。
潮時かと思ったんだ」
なるほど。それなら気持ちも理解出来る気がする。
「でもそれなら、まだ病院で新規の患者さん受け付けない、でもよかったんじゃないんですか?」
俺の感想とは違う理波ちゃんの問いかけに、武富老医師は鷹揚に肯いた。
「それでもよかったんだが、今は各地に巣立って行った患者さんたちの様子も見てみたいと思っていたんだ。
実を言えば地方の病院からも相談の手紙があってな、その対応に、是非現地に行きたかった。