白い闇に囚われてー刹那の風花ー【完】


それなら病院は辞めて、身軽になった方がやりやすいと考えたんだ。

そういう色々あってのことだ。

……辞めて上月に戻ってきたら、一緒に来てしまった患者さんもいるがな」



「すんません。うちの妹です」



「ははっ。儚ちゃんぐらいならもっと若いイケメンの先生のがいいだろうにと思ったよ」



「いやー、先生がおじいちゃんみたいな感じですからね、私らは」



「そうかい。ありがとよ。理波ちゃんと雅風も、もう一度儚ちゃん逢って行くかい?」
 


俺は勿論肯くけれど、だから理波ちゃんが先に答えるのを待った。



「はい。さっき約束しましたし」
 


その返事に、約束に縛られた風はなかった。



俺も肯き、武富医師に続いて院内に戻った。



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