バッド・ボーイ・ブルー
振り向いてはいけない。じわり迫る黒い影に追いつかれてはいけ無い。
藥でよろめく足を只管動かし、逃げる。只影から、匂いから逃げる。
過ぎる木々など気にせずに、風体など気にせずに走る。森から抜け出せば、森から抜け出せば、この匂いからも、黒い影からも解放される筈だ。
もう少し、もう少し行けば、抜けられる筈。
刹那、拳程の石に躓き転んでしまった。両膝からどくどく血が溢れる。立てない、立とうと思っても膝に力が入らない。感覚さえ無い。
転んで入った先は無数の茨や蔦が絡み合う、針地獄。頬が切れ涙と混じる。血の涙が伝った。
間も無く思考回路も痲痺した。纏わり付く甘味な匂いに身体中が痲痺する。
嗚呼、もう、終わりだわ。
死の機運が熟した。
「この森から抜け出せる訳がない」
迫る黒い影。
囁く冷たい息の音。
惹かれていた筈の、二人で一人の息の音。
狼少年、少女をパクリ。