18.44m
18.44m
マウンドから本塁まで、その間、60.5フィート。
18.44m。
決して遠くない距離なのに、陽炎がゆらゆら揺らめいていた。
打者が、審判が、本塁が、熱に炙られたかのようにぐにゃりと曲がって見える。
ただ、ミットだけがはっきりと目に映った。
右手に握りこんだ、確かな強い感触をもつ白い球。
これを全力で投げ込む。
その場所だけが、鮮明に分かる。
けれど、投げられない。
投球フォームに移れない。
背中と脇、首筋に、暑さのせいではない汗がふき出て流れる。
気持ちが悪い。
いや、それだけじゃない。
なぜだか、とてつもなく怖かった。
後ろに7人の仲間がいるはずなのに、目の前に相棒がいるはずなのに、この広いグラウンドで、自分独りだけで戦っている孤独感。
それが足元から、嫌な汗が逆に伝うように身体を侵食していく。