18.44m
18.44m











マウンドから本塁まで、その間、60.5フィート。


18.44m。


決して遠くない距離なのに、陽炎がゆらゆら揺らめいていた。


打者が、審判が、本塁が、熱に炙られたかのようにぐにゃりと曲がって見える。


ただ、ミットだけがはっきりと目に映った。



右手に握りこんだ、確かな強い感触をもつ白い球。


これを全力で投げ込む。


その場所だけが、鮮明に分かる。



けれど、投げられない。


投球フォームに移れない。


背中と脇、首筋に、暑さのせいではない汗がふき出て流れる。


気持ちが悪い。


いや、それだけじゃない。


なぜだか、とてつもなく怖かった。


後ろに7人の仲間がいるはずなのに、目の前に相棒がいるはずなのに、この広いグラウンドで、自分独りだけで戦っている孤独感。


それが足元から、嫌な汗が逆に伝うように身体を侵食していく。





< 1 / 42 >

この作品をシェア

pagetop