18.44m
バンバンバンバンバンバン。
ペットボトルやメガホンが立てる激しい音、吹奏楽部の管楽器の音、試合を見に来た高校生の声援。
さまざまな音が、グラウンドをめがけて雨のごとく降り注ぐ。
このマウンドに立つと、あらゆるところにぶつかって跳ね返ってくる音を全身で感じる。
なのに、耳の奥はやけに静かだった。
日差しはじりじりと熱い。
練習ですっかり黒くなった肌をさらに焼こうとしてくる。
汗が顎からしたたる。
帽子の中にも、ユニフォームの中にも、逃げ場を失った熱が渦巻いている。
けれども、身体の芯は鳥肌をおぼえるくらいに冷えきっていた。
駿(しゅん)。
声には出さず、ミットを構えるキャッチャーの名前を呼ぶ。
口の中が、カサカサと音を立てるほどに乾いている、干上がっている。
駿。次は、次はどこに投げればいいんだよ。
前のバッターが塁に出てから、駿と目が合わない。
遥(はるか)がいくら見つめても、彼の瞳の焦点が定まらないのだ。
内側から刺さってくる焦燥感が痛い。