18.44m
後頭部に衝撃が走った。
頬杖が外れ、遥は瞼を開ける。
木理が眼前に迫った次の瞬間、思いきり机に顔をぶつけた。
「んがっ!」
我ながら情けない声が出た。
周囲からくすくすと忍び笑いが漏れる。
痛みのせいで熱い鼻を押えながら身を起こすと、すぐ隣に立って腕組みする担任と視線がかち合った。
美形でスタイルも申し分無く、男子だけでなく女子人気も高い担任は、彼女のファンでも逃げ出しそうなくらい恐ろしい形相で遥を見下ろしていた。
ぞっと悪寒が走る。
「清水……。まさか開始直後から終了5分前まで爆睡するとはな。
私が起こさなかったら次の時間も突入だったか?
それほど、私のテストで好成績を取る自信があるのか」
「……へっ?」
担任の言葉に遥は黒板とその上にある銀のフレームの時計を見る。
午後最初のテスト、終了時刻までもう4分ほどしかない。
夢心地から完全に覚めて、遥は答案を見下ろした。
突っ伏していたせいでデコボコしている答案は、半分も埋まっていない。
やっべえ、数学でしか点数稼げないのに。
遥は慌てて鉛筆を片手に、計算問題にかじりついた。