18.44m
どうにか三分の二程度を埋めて、遥は椅子にへたりこんだ。
からかいに来たクラスメイトを追い払って、最後の英語のテストに向けて振り返りをする。
だが、テキストを広げても、何も頭に入ってこなかった。
諦めて閉じて、天井をあおぐ。
何でテスト中に寝てしまったんだろう。
昨夜は遅くまで勉強をしていたわけではないのに。
「返却日覚悟しとけよ」と意地悪く楽しそうに言って、担任は職員室へ向かった。
得意科目の数学を失敗したら、他の教科ではとても取り返せない。
英語はそこまで苦手というわけではないが、数学の代わりになんてならない。
中間テストより点数下がったら、母さん怒るだろうな。
気分が重くなって、遥は机に頬をつけた。
さっき見た夢を思い出す。
誰もいなくなったグラウンド、遠ざかっていったあいつの背中。
いくらなんでも、ひどすぎる悪夢だ。
そうか、あの試合から、もう一週間経つのか。
「おーい、試験始まるぞ。諦めて席につけー」
英語の試験監督の教師が、テスト用紙の入った茶封筒を片手に教壇に立つ。
遥は上体を起こし、軽く顔を叩いた。
今は、駿もあいつもグラウンドもマウンドも忘れて、目の前の最後の試験に集中しないといけない。
けれど問題を解きながらあの夢がどうしてもちらついて、結局、最後まで鉛筆は止まりがちだった。