18.44m
チャイムが鳴り、あちこちから解放された息や形にならない声が漏れた。
「よっしゃー、終わった、部活部活」
「こら、秋山。まだ清掃とホームルームがあるぞ、席にもどれ」
挨拶もそこそこにエナメルバッグを背負って、秋山祐太郎(あきやま ゆうたろう)が廊下に飛び出そうとする。
しかし、その直前に入ってきた担任に捕まった。
あちこちから笑い声が起こる。
バカじゃねえのアキー、という両国徹(りょうごく とおる)の言葉が聞こえた。
そうだ、部活が再開するんだったな。
遥は他人事のように思った。
どうしてだろう。
中間テストが終わった時は、秋山ほどではないが早く部活に行きたくてうずうずしていたのに。
今の胸は、驚くくらいに静まっていた。
野球の道具は忘れていない。
ユニフォームもグラブもボールも、鞄につめこんでロッカールームに置いてある。
一週間も離れていたマウンドに行けるのに。
どうしてだろう。