同居人は女社長
エリーナは仕事中は髪を左右のおだんごにまとめた赤毛で丸いダテ眼鏡をかけていた。
顔は美人というより、幼さがあってかわいい感じのソバカスっ子という感じだった。

しかし、レッドにはすぐにエリンだとわかってしまった。

ウィンクしてきたこともあるが、座って仕事をしている姿勢がエリンと同じで姿がエリーナのような風貌でなければ、やや冷たさも感じられるくらいピンとしっかりした姿勢だった。


オスカーには妹の友達に似たような娘がいると言ってごまかしておくしかなかった。


レッドが帰宅すると、エリンがリビングのソファーに座ったまま居眠りをしていた。


「こりゃ、疲れてるな。」


夕飯までレッドはエリンに布団をかけてそっとしておいた。


夕飯時にナナミアに起こされたエリンは声をあげていた。


「ごめんなさい!お夕飯お手伝いするって言ったのに・・・寝てしまって。」


「あ、気にしないで。
今日はレッドの会社で大変だったんでしょ。
それでしばらく続くんでしょ。
レッド兄が眠らせてあげなさいって・・・。」


「レッドが?そう・・・。じゃ、このお布団も?」


「うん。私もよくうたたねしてるとかけてくれるよ。
いいじゃない。大事な人に風邪をひかさないようにするっていうのは、両親も兄弟もみんなそう思ってるから。」


「そう・・・うちはそんなのなかったかもしれないわ。」


「えっ、だってエリンはお金持ちのひとりっ子なのに?」


「ひとりっ子がいつも大事にされてるとは限らないのよ。
会社があったから、両親ともに忙しいと子どもに布団をかけるのもめったにないわ。

たいていは、お手伝いさんがかけてくれるか、声をかけてくれて起こされるのが普通だった。」



「そうだったの。
でも、これからはお布団かけてもらえるからねっ!」


「うん。」


夕食後、エリンは掛布団を持ってレッドの部屋を訪ねた。


コンコン



「あいてるよ。」


「レッド、これ・・・。」


「疲れてるな。
マッサージでもしようか?
わざわざ、別の会社の経理まで担当してたら大変だったろう?」


「まぁ・・・私が自分でやりたいと言ったんだから、がんばらないと。
それに買収しようにも不明金があって対処不可能な会社では、どうにもできないから。」



「そりゃ、そうだな。
で、何か見つかったのか?」


「それが・・・ないのよ。」


「ないって?」


「帳簿がまるごと消えてるの。」


「くそっ、誰かが持ち逃げしたのか?」


「コンピュータもかなり削除されてたし、困ったことになったわ。」
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