同居人は女社長
食事をすませると、2人はショッピングセンターへと出かけて行った。


「へえ・・・けっこうかわいい扱いされてるんだぁ。」


「おいおい、買い物に行きたいっていうか付き合ったら仕事かい?
あれはもしかして、君がデザインした?」


「そうよ。新作の1つなの。
レッドと初めて会ったときにひらめいたの。」


「はぁ・・・俺でなんかピピッときたもんがあった?」


「うん、ワイルドな感じなのに、何だか憎めないかわいさみたいなのがあって。」


「うげっ。なんだそりゃ!」


「もう1つの新作はあっちのやつ。
あれはデートした記念。海がテーマなの。」


「あれはわかる気がするぞ。
また連れていってほしいって君が言ったそのままの気持ちだろ。

海の生き物が愛らしいワンポイントになってる。」


「うん。子どもっぽいかな?」


「いいや、いいんじゃないか。
ただの子どもが同じことを考えても夢だけで終わってしまうところだが、君には考えを商品化することができるんだ。

そしてまたこの食器を手にした人が夢を抱く。
考えただけでも楽しいことだよな。」


「うんうん。これだけは両親にいちばん感謝できるところなの。
私が表現する場を用意しておいてくれた。」


「なぁ・・・エリン、真面目な話なんだけどさ。
もし、もしさ・・・君がドネリティを追い出されたり、やめたりするようなことがあったら、ひとりで落ち込んだりしないで、絶対俺に言ってくれよな。」


「レッド・・・。私が追い出される前に自分が職を失うかもしれないのに・・・。」


「わぁお!!そうだよなぁ・・・帳簿を検分されて数人の派遣社員と副社長の癒着が見つかったんだからな。
気弱な社長は損失もあってますます弱気で、3流レストランとか病院とか地味な仕事しかとれなくなったみたいだしなぁ。

営業でもリストラが始まるし・・・。」


「レッドがリストラされたら、私が雇ってあげるわよ。
ドネリティから離れて別会社を作ってもいいなって思ってるし。」


「おいおい、別会社って何だよ。
社長を追われたからってそれは急だろう?」


「ううん。前から考えてたのよ。
両親とはぜんぜん違う考えの私の趣味のお店をやりたいって。」


「趣味って?」


「私のデザインで若い女の子が好む雑貨やさんをしたいの。
そういう仕事って年いっちゃうとできない気がしてね。

ドネリティと並行してこっそりやろうかとも考えたんだけど、ドネリティの社長しているとなかなか新事業って時間がとれなくて。
それに、ラングがダメ出ししてて・・・。」


「ラングが・・・どうして?」


「かわいいものを作るのと販売までのルートを確立してしまうのとは違うって。
ドネリティ社で作って、デパートや名のあるショップの一部で置いてもらう方がいいんだって。」



「ラングらしいな。あいつ、堅実すぎるから。
そうだなぁ・・・俺ならドネリティの名前を使わなくても同じデザイナーショップとしてインターネットショップあたりから攻めてみるかな。」


「わぁ・・・すごい・・・すごいわ、レッド。」


「おいおい・・・目が輝きすぎだろ。」
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